DV ドメスティック・バイオレンス
鬼頭泰子はジュエリーショップに勤務する29歳で、結婚3年目を迎える。ひと回り年の違うサラリーマンの夫・昭吾は泰子を心から愛していた。3回目の結婚記念日。昭吾は、会社帰りに花束を持って妻の勤めるジュエリーショップの前に立っていた。泰子は、年下のハンサムな同僚・前田と親しげに言葉を交わしている。それを昭吾は見ていたが、携帯で体調が悪いと妻に伝えると、その場を立ち去るのだった。その夜、眠っている妻を見下ろす昭吾は、頭上の蛍光灯を点けては消し、消しては点ける。そんな動作を延々と続ける昭吾。それがすべての始まりだった。数日後、泰子の友人との思い出の写真やアルバムがすべて捨てられ、泰子の知らない間に銀行口座も解約。仕事をやめて欲しいと通勤定期を抜き取るのだった。また、風邪で寝込んだ妻の体調もかまわず体を求め、調味料が気に入らないと怒鳴り、友人との楽しそうな電話のやり取りを耳にしてテーブルをひっくり返す、カラオケボックスの店内で力いっぱい殴りつけるなど暴挙をくり返した。そこで、泰子は夫の暴力に苦しむ中年女性・霧島の紹介で宗方という男の事務所を訪ねる。「殺してもいいんですよ、正当防衛なら。あなたが死ぬことはない」。「DV被害者が一番に乗り越えなくてはならないこと。それは“自分自身が被害者である”ということに気づくことです」と宗方は告げるのだった。